遺書。

サービスの秘石眼が暴走し、辺り一体を吹き飛ばした。
気がついてみると周りは瓦礫と死体ばかり。俺は深手を負ったものの、辛うじて生きていた。

「サービス・・・」

サービスに駆け寄り気を失っている相手を抱き締めた。
サービスは大丈夫、怪我もしていない。
良かった、しかし早くこの場から立ち去らないと。
思い、サービスから視線を外し辺りを再度確認しようと顔を上げると。

目の前にルーザー様が立っていた。

その直後、身体が焼かれる様な裂かれる様な痛みが全身を襲う。
そして気付いた時には俺は瓦礫に凭れ掛かり、指の一本も動かせない程の傷を受けていた。

ルーザー様は気を失ったままのサービスを抱き上げると、そのまま振り返りもせずに歩き去って行く。
瓦礫と死体しか無い場所で、俺は「死」を待つだけだった。

(この身体はもう持たない・・・遅かれ早かれこうなる運命だったんだろうけど・・・。身体が壊れて意識が離れてしまう前に、あの人に逢いたい・・・)

血が流れていて視界は紅い。
辛うじて動いた首を上に向け空を仰ぐと、雲一つ無い青空だった。マジック総帥と出逢った日から今までが一気に頭の中を駆け巡って行った。ああ、これが走馬灯というやつなんだろうかと。酷く冷静な自分が居る。身体は朽ちても意識は死なない。身体はまた作り直してもらえば良い、だから「死ぬ」事は怖くなかった。

(でも・・・)

マジック総帥の傍に居られなくなってしまう。

(ごめんなさい・・・)

意識が徐々に薄れてきた。視界も霞が掛かる。

(裏切ってごめんなさい・・・)

俺は空を仰いだまま目を閉じる。
こんなにあの人を愛してしまっていた事を、離れる今気付くなんて。俺はなんて馬鹿なんだろう。
いけないと解って居たのに、敵同士だったのに。こうなる運命だったと、頭の片隅では気付いていたのかもしれない。それでもあの人を好きになってしまって、傍に居たくて。でも、やっぱり駄目だった。

(こんな形で貴方の前から姿を消す俺を、貴方はどう思うのだろうか)

視界が段々と暗くなる。

(許してくれるだろうか、貴方は優しい人だから。こんな裏切りをした俺を憐れに思うのだろうか)

青かった筈の空の色は、俺にはもう灰色にしか見えない。

(俺は貴方に本気で愛されていたでしょうか。俺は・・・本気で貴方を好きになってしまっていました・・・愛してしまってごめんなさい・・・)

浮かぶのは謝罪の言葉ばかりだ。

「もう、行かなくちゃ・・・」

搾り出した声は掠れていて、自分でも聞き取れない位のものだった。

(本当はもっと傍に居たかったけど)

「お別れです・・・」

ああ、視界が消えていく。

(もう二度と逢えないと思います。俺を許してくれなくても良い・・・)

「でもどうか貴方は生きて下さい」

(いつも無事である事を、遠くから願っています)

視界は完全に暗くなり、意識は闇へと沈んで行った。

最後の最後まで、マジック総帥の事を想いながら俺の意識は遠くへと引き離されて行った。


完全に抜け殻になった俺の身体。
マジック総帥がこの場を訪れたのは僅か数分後の事だった。










暗っ。
マジジャンというかジャンの独白なんですが。
死に別れです。マジックパパが来る僅か数分前までは生きてたかもしれない。という何とも後味の悪い話ですいません。
この数分後が「焼け野が原」に続く形です。どっちも暗い。