Wine

それは本当に珍しい光景だった。

青の一族3人が集い、そしてそこには高松とジャンも居た。
自分の兄である、マジック元総帥の私室のアンティーク調のテーブルには、空になったワインの瓶が幾本も置かれている。
一番飲んでいるのは、やはり酒好きのハーレムだろうか。ザル、とまではいかないが相当に酒には強いらしい。
かなり飲んでいるようになのに、顔色が変わった様子は見受けられない。
そして、この奇妙なメンバーの中、次に酒を多く飲んでいるのは意外な男だった。

「ジャン、今日は良く飲むけど大丈夫なのか?」

いつも以上に酒を飲んでいるジャンを心配し、声を掛けた。
問われた本人は声のした方にくるりと振り返る。
その顔は、ほんのりと赤くなっている。ジャンは普通とは違うゆえ、酒を飲んだって酔っている姿は見た事が無かった。それを知っているから心配になり、声を掛けたのだが、当の本人はほろ酔い気分で上機嫌。

「んー?平気だけど?」
「いつもはこれ位じゃ酔わないでしょうに、今日は珍しいですね・・・」

次に不思議そうに声を上げたのは高松だった、平気だと言いながら尚もワインを飲んでいるジャンを少々訝しげに見遣る。
見られているジャンは気にした風も無く、ワインの入ったグラスを空にするとテーブルへと置いた。

「いつもは中でアルコール分解させてんだけど、今日はしてねぇからな。だから酔ってんだけど」
「ほう、君の身体は本当に並外れているんだねぇ」

次いで兄のマジックが驚いた風に声を上げた。頬をほんのり赤くしているジャンを笑顔で見つめている。

「つーかよ、何でこのメンバーで酒飲んでるんだか」
「いーじゃんかよ、俺がこのメンバーで飲みたかったんだから」
「召集掛けたのお前かよ!知ってたら来なかったっつーの・・・」
「マジック様〜、ハーレムが冷たい」
「いけない弟だね、ほらジャンこっちにおいで」
「ジャン、危ないからそっちに行くのは止めなさい」
「あーもう、騒がしいですねぇ・・・」

ハーレムに冷たくあしらわれたジャンは、マジックに呼ばれるままにそちらに行こうとしたのだが。手が早い兄の事だ、酔ったジャンに何をするのか解らない。取り敢えず立ち上がって兄の元へ行こうとするジャンの腕を取ると、ソファへと戻すように座らせた。
皆が一斉に喋る中、高松だけが遠巻きにその光景を眺めている。

本当に不思議な光景だと思った。
こんなメンバーで酒を酌み交わす日が来るなんて、永遠に無いものだと思っていたから。
そしてジャンが酔っている姿というのも、見た事な無かったものだから。

「ジャン、中で分解させないなら。あまり無理して飲むんじゃないぞ」
「へーきだって〜。だいじょうぶ!」

何を根拠に大丈夫なんて言葉を言っているのだろうか。
酔ってない、大丈夫という人程酒に酔わされているというのに。しかも酔うのが初めてなのだったら、尚更質が悪いのだが。ジャン本人は酔いも廻ってきている為、大した事無いと思っているのだろう。初めて酔うと、加減が解らずに飲みすぎてしまうというのに。

「呂律が廻ってないけど、大丈夫かい?」

マジックが少し心配そうにジャンに声を掛けて軽く頭を撫でる。
ジャンは、それが気持ち良いのか目を閉じて大人しくしている。私はそれを見て、軽く肩眉を上げる。

「そろそろお開きにした方がいいんじゃねぇか?」
「そうですね、呼び出した本人が早々に酔い潰れそうじゃ話しになりませんしね」
「残念だけど、その方が良さそうだね」

最後にマジックが言ってからジャンの頭から手を引いていく。
「お開き」という言葉は酔っ払いの耳にもちゃんと届いたようだった。不満そうに頬を軽く膨らませているその姿は、まるで子供そのものだった。

「え〜もっと飲もうぜ〜」
「駄目だよジャン、飲み過ぎは身体に良くないからね。また今度、ゆっくり飲もう」
「・・・つまんねぇ」

マジックに窘められるように言われれば、また頬を膨らませる。
酔うといつもより更に子供のような行動をするんだな、なんて今更ながらの再発見。

「ジャン、ちょっと飲みすぎだぞ。部屋に帰ろう」

私はジャンに声を掛けてから相手の手を取り立ち上がる。
先に失礼させてもらおうかと思って出入り口の扉を目指そうと歩き出そうとしたのだけど、ジャンは真っ直ぐ歩けないらしく。左右に揺られながら引っ張られるままに歩き出した。

「ジャンの介抱しないといけなくなりそうなんで。兄さん、先に失礼しますね」
「ああ、ちゃんと寝かせるんだよ。ジャン、おやすみ」
「まじっく様、おやすみなさい〜。あ、たかまつとはーれむも」
「俺等はおまけかよ」
「はいはい、挨拶はいいからとっとと寝なさい」

高松は、さっさと行けと言わんばかりに手を振って。しっしっ!と、まるで動物でも追い払うような仕草を見せる。
それに小さく苦笑を漏らしながら、私はジャンと部屋を後にした。




「ジャン、大丈夫かい?」
「うーん・・・へいき・・・」

ジャンの部屋より自分の部屋の方が近かった為、自分の部屋にジャンを連れ込んだ。
取り敢えず靴を脱がせればベッドへと相手を転がしてから、自分もベッドの脇へと腰を下ろす。
振り返れば、頬を赤くして少し息の荒い相手がベッドに仰向けになっている姿が目に映る。その姿を眺めながら、ずっと疑問に思っていた言葉を投げ掛けた。

「ジャン、今日はどうして体内でアルコールを分解させなかったんだい?お前が酔ってる姿なんて初めて見たよ」

頬へと手を伸ばして触れれば、体温の高い相手の皮膚はいつも以上に熱さを増している。
私の手の冷たさが気持ち良いのか、ジャンは掌に頬を擦り寄せながら口を開いた。

「だってさぁ、こんな機会なかったし。ちょっと酔ってみたいなっておもってさぁ」

呂律は相変わらず廻っていないままに返事を返す。
まぁ、確かに早々集まれる訳ではないけれど。でも。

「こんな姿、私以外の奴に見せるな」
「さーびす・・・?」

ジャンは私の声に気付き、閉じ掛けていた瞼をゆっくりと開く。焦点がまだ定まりきらない視線でどうにか私を捉えると、服の裾を握り締めてきた。

「おこったか?」
「怒るというか何というか・・・」

上手く言葉が浮かばない。
とにかく、ジャンのこんな姿を他人には見せたくなかった。
そんな私の心中を察したのか、ジャンは寝そべっていた身体を起き上がらせると後から腰に腕を廻して抱き付いて来た。

「ごめん、もう酔わないから」
「酔うのがいけない訳じゃない、私以外の人の前では止めて欲しいだけだよ・・・。私は、こう見えて嫉妬深いんだ」
「おまえらしく無い台詞だな。でも、嬉しい」

背中から忍び笑いが聞こえて頬を擦り寄せられた。
ただそれだけの行為に、愛しさが込み上げてくる。
私は身体を反転させれば、向き合った相手を抱き締めた。

「好きだよ、ジャン」
「俺も」

ジャンは頬を赤くしたまま笑って返し、私は愛しい恋人の額にキスを落とした。

ずっと好きだよ。
今度は二人の時でだけ、その姿を見せて欲しい。











久々のサビジャンですかな。
ジャンの身体には色んな機能がいっぱいなのだ!
酔ったジャンと嫉妬するサビ様が書きたかっただけです。ごめんなさい(何)