過去と未来4

陽は沈みかけ、明かりも点けていない薄暗い部屋には息の上がったような呼吸の音が響いている。

窓から入りこむ微かな光に映し出される二つの影は、スプリングが軋むベッドの上で絡み合っていた。
組み敷いている相手の方はこのような行為に慣れていないのだろう、相手を愛撫する動きはたどたどしく、時折どうしていいのか解らないというように、手は行き場を失くしたように動きを止める。
組み敷かれている方は、そんな相手の手を取り、自分の身体の敏感な部分へと誘導するようにその手を運ぶ。
二人の衣服は既に身に着けられてはいなかった。

「こ、こことかも・・・」

案内されるように引っ張られた指先に、ふくりと膨らみを帯びている突起が当たる。
キンタローがおずおずと、その部分を指の腹で擦ってみると、途端にジャンの身体が小さく震えて反応を返す。

「んっ、はぁ・・・」
「ここ、気持ち良いのか・・・?」

純粋に問い掛けてくる相手に、ジャンは頬を赤く染めて頷きを返す。
するとそれを合図のように、突起を今度は軽く指先で摘まみ軽く捏ねるように動かし始めた。
もう片方の突起には、唇を寄せて舌先で軽く突付くと、そのまま口内へと含んで痛くない程度の強さで軽く吸い上げる。

「ひゃっ!ちょ、あっ・・・ん、んん・・・!」

突然の刺激にジャンは声を上げ、背を反らせた。
キンタローは構わず、口内で突起を吸ったり舌で突付いたりし、もう片方は指の腹で捏ねたり転がしたりを繰り返す。

「ば、ばかっ・・・そこばっか、いじるな・・って!」
「どうして、気持ち良いんじゃないのか?」

ジャンが思わずキンタローの髪をぐいっと引っ張れば、顔を上げまたも純粋な問いかけを返される。

(こいつ、俺からキスした時は焦ってたのに慣れるの早くないか!?やりにくいなぁ・・・もう・・・そんな純粋に問い掛けてくるなよ・・・)

そんな事をぐだぐだと考えている間に、いつの間にやらキンタローの顔が目の前にあって、ジャンは数秒の間・・・の後に「わっ!」と声を上げて驚きをあらわにしていた。
キンタローは驚くジャンの事など気にせずに口付けを落としてきた、ジャンは驚いて声を上げた事を恥ずかしく思いながら口付けを受け、目を閉じる。
ジャンの方から相手の唇を軽く啄み、角度を変えてキスをしていると、下肢で頭を擡げ始めていた自身に冷たい手が触れてジャンは肩を震わせて相手から唇を離してしまった。

「ふぁっ・・・!」
「ここも、気持ち良いのか?」
「聞くなバカっ!」

またも純粋に問い掛けられてしまい、ジャンは瞬時に顔を耳まで真っ赤に染め上げる。
キンタローは真っ赤になったジャンの顔を見て、微かに微笑む。しかしジャンはその優しげな微笑を見て、更に顔を赤くしてしまう。

「笑うなよ・・・」
「笑ってない、可愛いなと思っただけだ」
「そんな事言われると反応に困るんだけど・・・」

真顔で言うなっての、とジャンは悪態づく。
そして、「可愛い」なんて昔あの人に言われて以来だと思った。

(ああ、もう・・・考えないようにしようと思ったのに・・・思い出しちまった)

脳裏に浮かぶのは、自分を優しく抱く逞しい腕、優しく低い耳心地の良い声。
そんな事を思い出していると、胸にぽかりと空いている穴がちくりと痛む気がした。
そうして考え込んでしまっていると、ひやりとした手で自身を緩く扱かれて思考が現実へと引き戻される。

「あっ、んん・・・」

思わず喘ぎを漏らし手の甲を顔の上に置いて隠す。
久方振りの行為にすぐに身体は反応し、すぐに追い上げられてしまう。
喘ぐ声や呼吸はだんだんと小刻みになり、限界が近い事を自然と訴える形になる。

「あ、あ、やっ・・・も・・んんっ!」

腕で顔を隠したまま、背を反らせると腰を微かに浮かせてから相手の手の中に熱を放った。

「――・・・はぁ、はぁ」

肩で大きく呼吸をしながらベッドに突っ伏していると、ジャンの頭に手が置かれた。

「大丈夫・・・か?」

心配そうに伏せている顔を覗き込まれて問い掛けられれば思わず苦笑が漏れてしまう。
「平気だ」と返せば、背後から覆い被さるように抱きすくめられてジャンの鼓動が小さく跳ねた。

「キンタロー・・・あっ・・・!」

相手の名前を呼ぼうとした声は途切れてしまう。
それはキンタローが先程ジャンが放った白濁の付いた指先を双丘の奥にある窄まりに宛がい、ゆっくりとそこを解すように撫でていたからだった。
ジャンは伏せていた顔を上げれば、背後に居る相手を振り返る。それと同時に窄まりを撫でていた指が一本、中へとゆっくりと侵入を開始を始め、声を上げてしまう。

「や、あ、あ・・・」
「・・・嫌か?」

思わず漏れた声にキンタローがまたも心配そうに問い掛け、手の動きを止める。
ジャンはそれに気付くと、赤い顔のまま首をゆっくり左右に振った。

「いや、じゃない・・・平気だ・・・」
「やっぱり、無理してるんじゃないのか」
「してねぇってば、大丈夫だから・・・」

そう言えば、微かに脚を開き相手の手が動き易いように身体を動かす。
そしてそれを合図にしたかのように、止まっていた指が再び動き出し、一度奥まで行くとまた引かれまた奥へと動く。
中を解すようにゆっくりと抜き差しを繰り返され、その指はいつの間にか二本に増やされていた。
ジャンは中で蠢く指に反応し、時折締め付けて反応を返す。そんな相手の姿にキンタローも抑えがきかなくなってきたようだった。
緩くピストンを繰り返していた指を引き抜き腰を両手で持ち、そのまま力任せに引っ張り上げた。
突然の事にジャンが驚き背後に居る相手を振り返るその姿は、腰だけを高く上げさせられていてまるで伸びをしている猫のような体勢で、俗に言う「キャットバック」というものだった。

「ジャン・・・」

切羽詰ったように名前を呼ばれ、窄まりに指とは比べ物にならない質量のものが宛がわれる。
ジャンは困ったように笑みを漏らし、小さく頷いた。
それを合図に、キンタローの身体が背後からジャンに覆い被さる、そして狭い入り口をこじ開けるように内部に押し入る圧迫感と慣れない痛みに、ジャンは顔をシーツに突っ伏して声を上げる。

「ぅあっ・・・あっ!」
「―――っ!」

ジャンの中の狭さと温かさ、そして締め付けられる動きに小さく呻きながら根元まで自身を埋め込み、一度一息つけばそのまま被さったまま相手を抱き締めてから腰を引いてから奥を月上げた。

「ひぁっ!あ、あ、あ!」

突かれる度に組み敷いた相手は声を上げ、腰を高く上げたまま指が白く成る程シーツを握り締めている。
キンタローは、喘ぐジャンの顔を見て余裕が無い様子で何度も律動を繰り返す。
相手はやはり何度見てもシンタローにそっくりで、彼を抱いている錯覚に陥ってしまう。
初めての行為に限界はすぐにやってきた。
今度は自分が達する為、腰の動きは速くなる。相手をきつく抱き締めて嬌声を上げる相手の顔を見つめてから、最後に一度強く相手の最奥を突き上げた。

「あっ、あっ、あ――っ!」
「―――――っ!」

ジャンの中で達したと同時にキンタローは相手の名前を呼んでいた。
決して振り向いてはくれない、相手の名前を。







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キンジャンです。
頑張ってエロを目指した結果がこれですYO!