promise

その日の彼の寝顔はいつもと違った、苦しげな表情だった。


身体を重ね合った夜は、愛しい恋人が寝付くまで自分は眠らない。
ジャンの寝顔を眺めてから眠りに付くのが、最近の自分の日課となっていた。

その愛しい彼の寝顔が、今日は何だか辛そうに歪められている。
いつもよりも呼吸も荒く、時々小さく唸るような声を上げていた。
起こした方がいいだろうかと、悩み。ジャンの意外にさらりとした黒髪を、優しく梳くようにして頭を撫でた。
それでも彼はまだ苦しそうで、いつの間にか握り締めていたシーツには濃い皺が刻まれている。

そして目元から一筋の涙が零れて落ちて行く。

もうどうしようもなく、私はジャンの肩に手を掛けると軽く揺さぶり。声を掛ける。

「ジャン!」

ハッとしたようにジャンは目を開いた。
そしてゆっくりと上半身を起こして、辺りを確認するかのように部屋を見渡している。
私も身を起こし、彼の頬に伝っている涙を人差し指で掬い取る。そうして、ジャンはようやく自分が泣いていた事に気付いた。

「夢・・・見てた」

ジャンは私へ向き直るとぽつりと呟いた。

「どんな夢を見てたんだ?」
「んーと・・・昔の夢・・・」
「良い夢では無かったみたいだけど」
「あー・・・うん・・・」

ジャンは人差し指で頬を掻くいて視線を空へと逸らしている。
言い辛い夢のようだった。

「どんな夢?」

私がしつこく食い下がると観念したように口を開く。

「ルーザー様に殺された時の夢」

私は一瞬言葉に詰まる。それと同時に、だから言い辛かったのかとも納得もした。

「もう忘れたと思ったのに、夢に見ちまった。しかも夢で泣いてるし、馬鹿みたいだな俺」

明るく言って誤魔化そうとしている彼が居た堪れなく思い、衝動と共にジャンの身体を掻き抱いた。
情事の後の姿のままの為、相手の肌の温もりが感じられ。更に強く抱き締める。

「サービス、ごめん心配掛けて」
「謝るな馬鹿」
「ごめん・・・。もう大丈夫だから」

あの時の事は自分も忘れる事なんて出来ない。
でも自分以上に、きっともっとジャンの方が辛かっただろう。

「俺はずっとここい居るから」
「ああ、私ももうお前を離さない。ずっと傍に居ろ」
「うん、お前が望むまでずっと傍に居るよ」


それは誰も知らない、二人だけの約束。
永遠に終わる事の無い。










拍手に置いてたサビジャン。
情事後。大人の時間(何)
うちのジャンは謝ってばっかりだー。