目を開くと、目の前には高い天井が広がっている。
半分意識が覚醒していないままゴロリと寝返りを打った。
すると目の前にマジック様の顔があって俺は思わず声を上げてしまった。
「わぁっ!?」
「おはよう、良く眠っていたね」
驚いた俺の事なんて気にもせずに、マジック様はにっこりと微笑んでいる。
俺が状況を把握出来ないで混乱していると、頭をぽんぽんと軽く撫でられる。
その行為を受けながら、俺は記憶を辿っていく。
サービスが俺を置いて仕事に行ってしまって。
で、俺はマジック様の膝の上で泣いて・・・。
そうだ思い出した。
俺はそのまま泣き疲れて、マジック様の膝の上で眠ってしまった事を。
しかし今はマジック様の添い寝付きでベッドに居るという事は、眠った俺を運んでくれたのか。
自分の醜態を思い出すと、恥ずかしさに顔が熱を持っていく。
そんな俺の反応を見たマジック様が、くすりと笑みを漏らす。
「気にしなくていいんだよ。今日は色んな事があって疲れているんだろう」
「気にしますよ・・・恥ずかしいです」
マジック様の顔を直視出来なくなって来た。
俺は高級羽毛布団を引っ掴むと、そのまま頭から被って布団の中で膝を抱えて丸くなる。
ああ、情けない。
こんな姿見られたく無かったのに。
「隠れなくてもいいじゃないか」
布団越しにくすくすとマジック様の笑い声が聞こえて来る。
隠れたくもなるっつーの、と思いつつ。布団に包まったまま俺は深い溜息を零した。
いい加減顔の熱も落ち着いて来たので布団から顔を出してみる。
少し離れた場所にマジック様が居て、俺と視線が合うと優しく微笑まれた。
そして俺に近付くと布団をゆっくりと退かされる。
俺を頭から下までじっと見て。
「本当に女の子の身体なんだね」
と、言われて手首を掴まれた。
「細いね、いつもとは大違いだ」
「そうですね・・・情け無くって死にたい位です」
「そんな事言うものじゃないよ。こんなに可愛いのに」
「ちっとも嬉しくないんですけど!」
可愛い。と言われたのはこれで何度目か・・・。
益々情けなくなって再度深く深く溜息が零れた。
いまだに掴まれたままだった手首を押された。
俺は重力に従うままにふかふかのベッドへと仰向けに倒れ込んだ。
え?と、思って。身体を反射的に身体を起こそうとしたら、目の前にはいつの間にかマジック様が居るではないか。
「マジック様?」
「君は本当に無防備だね。今自分の置かれている立場、解ってるかい?」
マジック様は、腰が砕けるような甘い、低い声で囁きながら。俺との距離を縮めて行った。
顔は、吐息が掛かりそうな位に近く。両腕は、いつの間にか押さえられていた。
俺は、あまりに急な事で何が起こったのか纏める事で精一杯だった。
段々と今の状況を飲み込んで来たが、もう逃げる事なんて出来ない状況だった。
現役を退いたとは言え、元はこの軍のトップに君臨していた人だ。男の姿のままでだってこんな状況になってしまえば逃げ出すのは困難なのに。今の状況ではもう、この腕から逃れられる見込みは万に一つも無い。
「変な事したらサービスに言い付けますよ!?」
「君は時々とても子供染みた物言いをするね。それも君の魅力の一つなんだが」
人の話聞いてないし!
マジック様に掴まれた腕に力を込めてみるがビクともしない。
力の差はあまりに歴然としていて、それを見せ付けられたようで今更ながら愕然としてしまう自分が居た。
逃げられない。
サービスの馬鹿野郎!!と、居ない愛しい相手に心の中で悪態を吐いた。
マジック様との距離はあまりに近過ぎて、俺は混乱と恐怖に耐えるように。
ぎゅっと、固く目を閉じたのだった。
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ちょっとマジジャン。
毎回ジャンが鈍すぎでしょうか。