初恋クレイジー5

「聞きたい事があるんだけど」

朝早くに俺の部屋を訪ねて来たのは、双子の弟サービスだった。





昨日はジャンが部屋から居なくなってから暫く呆然としてしまい。
何も手に付かず。結局早々にベッドに倒れこむように眠ってしまっていた。

そして早朝、部屋の扉をノックする音に目を覚ます。
重たい瞼を開き、ベッドの脇にある小さなチェストの上に置いてある目覚まし時計を手に取った。

只今の時間、AM5:00。

時間を見て思わず「はぁ?」と声を漏らしてしまった。
なんだってこんな朝早くに俺の部屋に人が?

もしかしてジャン?

いやまさかそんな筈は・・・。
そう思いながらも俺の脚は扉へと一直線に向かっていた。
そうしてノブに手を掛けて扉を勢い良く開いた。

「おはよう」
「サービス・・・」

ヒクリと俺の口端は引き攣った笑みを浮かべた。
何でコイツがこんなに朝早くに俺の部屋に・・・。

「何か用か・・・?」
「ちょっとね」

言うとサービスは腕を組んでじっと俺の目を見据える。
何だ・・・魔女みてーな顔で見るな。コエーっつの。

「聞きたい事があるんだけど」
「聞きたい事?」

そういえば、サービスはジャンと同室だった。
その事を思い出した途端、俺の心臓がドンッと煩く響いた。

もしかしてジャンが昨日の事をサービスに言っちまったのか?

「僕の同室の人の事なんだけど。ジャンって言うんだけど、知ってるよな?」
「知ってるけど、何だよ」

平静な振りを装って言葉を発してみたものの、内心心臓はバクバクと激しく鼓動を繰り返している。
サービスは知ってしまったのだろうか、昨日の惨事を。

「取り合えず、ここで話すのもアレだから部屋ん中入れ」

俺はサービスを部屋へと招き入れると、さっさと扉を閉める。
ヤベ、動揺してしまいそうだ。
扉を閉めて冷や汗を掻く。しかしサービスはそんな俺の様子には気付かず部屋の奥へと入って行く。
俺のベッドを見つけると、そのまま遠慮も無く腰を下ろす。
俺は隣に座るのも何なので床へと胡坐をかいて座った。

「ハーレム、君さ。ジャンといつ知り合いになったわけ?」

魔女・・・基サービスが口を開く。
俺は質問の内容を訝しげに思いつつ頭の中で言葉を反芻させる。

「あー・・・・一週間前くらいか・・・?多分」
「ふぅん。一週間で君が自分の部屋に呼ぶ程仲良くなってるとは思わなかったよ」

何とも棘のある言い回し。
やっぱりジャンが喋ったんだろうか。

「何で俺の部屋に呼んだって解るんだよ」
「目撃者が居たから」

サービスは端整な顔に、にっこりと嘘臭い笑みを浮かべて俺を見る。

「目撃者・・・?」
「そう、友達が僕達の部屋の前でびしょ濡れになってるジャンと君を見掛けててね。そのままジャンの手を引いて自分の部屋に連れて行ったらしいじゃないか」

どうやら部屋へと向かうまでの一部始終を見られていたらしい。

「それで、その日の夜にジャンは戻って来たけど。何だか酷く具合が悪そうでね」

サービスは淡々とした口調で喋りながらベッドの上から床に胡坐を掻いている俺を冷たい眼差しで見つめる。

「ジャンに何があったのかと思ってね。こうして聞きに来てみたんだけど」
「別に何も」

咄嗟に口から言葉が出ていた。
ハッとしてサービスの方を見ると。いかにも疑わしげな目線で俺を見ている。

「タ、タオルを貸してやったんだけど。アイツ満足に拭けて無かったんじゃねーかな。風邪引いちまったんじゃねーのか?」

俺は魔女とは視線を合わせないようにしながら早口で喋る。
その間もサービスからの視線を感じていたが気付かないフリをした。

「そう、それだけならいいけど。今具合悪くして寝込んでるから、見舞いに来たければ来てもいいよ」
「あ、ああ・・・」

何だか上から目線な言い方が気になったが・・・。
サービスは最後にそれだけ言うとベッドから立ち上がり扉へと向かって歩き出した。
そしてそのまま、「じゃあ」とひらりと手を振って俺の部屋から出て行ったのだった。

俺は「ジャンが寝込んでいる」事と「見舞いに行く」という言葉がいつまでも頭の中に響いていた。





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ジャンがまったく出て来ませんでした。
双子もんちっち、サービスは昔から偉そうというイメージです。
いつ終わるのかなこのシリーズ・・・。